11月9日は「いい(11)くう(9)き」の語呂合わせで「換気の日」です。
換気および換気扇に関する理解を深めてもらおうということで、1987年に日本電機工業会が制定しました。
昔の日本の家屋というのは障子・ふすまといった「紙」系で閉じられていて下は畳と床板、上も天井板ということで完璧に隙間だらけ。換気の必要性はほとんどありませんでした。
それが昭和30年代以降アルミサッシが普及し、壁もモルタル塗りなどが増えて、気密性の高い家が生まれ、この昭和30〜40年代には冬季にこの密閉された家で練炭コンロや火鉢・豆炭炬燵などを使用して一酸化炭素中毒を起こす事例も頻発しました。
その後多くの人が事故を恐れてそういう暖房器具・調理器具を使用しなくなり、ガスコンロ・ストーブ・電気炬燵などを使うようになったため事故は減りましたが、ガスコンロやストーブなどは火力が強くて不完全燃焼は起こしにくいですが、パワーの強い分酸素の消費量が練炭炬燵や火鉢より当然多いですから、逆にしっかりした換気が必要になってきます。特にガスコンロの普及とほぼ並行して換気扇は普及したとみてよいと思われます。
(ガスや石炭が燃える時は炭素 C が酸素 O と結合して CO2 を生成しています。ところがこの時完全な結合が行われないと CO という中途半端な物質ができてしまいます。COが一酸化炭素、CO2が二酸化炭素(炭酸ガス)です。
一酸化炭素が人間の体内に入りますと血液中の酸素の運び手であるヘモグロビンと結合してしまい、体内に酸素が行き渡らなくなります。これが一酸化炭素中毒で、重い場合死んだり植物人間になったりします。
完全燃焼が行われている場合でも密閉された空間ではどんどん酸素が消費されていますので、酸素の密度がどんどん減っていき息苦しい感じになったり、極度に眠くなったりします。もちろん誰もいない所でこの状況で寝てしまったら危険です。潜水艦の中のような完全密閉空間だと窒息死の可能性もありますし、どっちみちホントに酸素が足りなくなると不完全燃焼が起きて一酸化炭素が発生し、結局死ぬことになります)
初期の頃は住宅が換気扇のことなど考えずに作られていましたので、最近ではエアコンでよくやるような窓に取り付ける方式で設置されていましたが、昭和40年代以降に作られた住宅ではだいたい最初から換気扇が作りつけられているはずです。
■換気扇と空気清浄機
室内の空気がよどんでいる時に換気扇のある側と反対側の窓を開けて換気扇を掛けるのはたいへん効果があります。室内に漂っている細かい塵などもこれで排出されます。
細かい塵の排除には空気清浄機も効果がありますが、これは室内で運転されているだけですので、酸素供給の効果はありません。結果的には併用するのが一番良いでしょう。
工場が近くにあったり道路のそばだったりして屋外の粉塵がひどい場合は外気清浄フィルター付きの熱交換型換気扇を使う手があります。熱交換型換気扇は室内の温度をあまり下げないので、寒冷地でも大助かりです。
■トイレと換気扇
外に開いた窓があるトイレならいいのですが密閉空間の中にトイレを設置する場合は換気扇を一緒に設置するケースが多いようです。
トイレの臭いを消すために芳香剤を多用する人もあるのですが、芳香剤はほとんどが化学物質。使いすぎると寿命を縮めることにもなりかねません。(臭いを消しているのではなく、より強い臭いで誤魔化しているにすぎない)芳香剤に凝るくらいなら、むしろ換気扇常時運転の方がお勧めです。
換気扇は単なるファンなのでだいたい24時間運転しても電気代は3〜5円程度のはずです。
■お風呂と換気扇
昭和30〜40年代はお風呂での一酸化炭素中毒もよくありました。特にお風呂の中にガス釜がある方式では、冬季には寒いもので窓を閉じたままお風呂に入るケースが多くたいへん危険でした。当時は「内釜方式のお風呂では絶対に窓を開けてください」と盛んに広報が行われていました。
現在では内釜式の場合、強制排気方式が普通になっています。それで中毒は減りましたが、浴室の場合換気扇があれば、早く湿気を追い出せるという問題もあります。浴室を乾燥させるには、お風呂のお湯を抜いた後でだいたい3時間程度換気扇を回せばよいとされます。