11月20日はホテルの日です。語呂合わせで8月10日・宿の日というのもあるわけですが「ホテルの日」のほうは、明治23年(1890)の帝国ホテルの開業を記念したものです。
これは当時日本に外国人VIPを泊められるような立派なホテルがなかったことから、時の外務大臣・井上馨が音頭を取り、VIPを迎える立場である宮内庁が当初の資本金の約2割にあたる5万円もの出資をして建設されたものです。まさに国家事業として作られたものであり、6年前にオープンした鹿鳴館に続いて日本が「西洋並み」であることをアピールして、不平等条約を改訂するための材料とする意図がありました。
建物はルネッサンス風の煉瓦造り3階建てで、60の客室のほか、舞踏室や音楽室などを備えたものでした。鹿鳴館は当時の西洋人たちに「場末のカフェみたいだ」と酷評されてしまったので、さらに設計者がセンスを磨いて作りあげたものです。1892年には株主の一人浅野総一郎のお嬢さんが結婚式を挙げ、これがホテル結婚式の最初といわれています。
「ホテル」の語源はラテン語の hospes(旅人)であるといわれています。その旅人を手厚くもてなすというのが hospitality 、同じ手厚くあつかうのでも対象が旅人ではなく病人である場合は hospital となります。この付近は全て同じ語源です。しかし実際には、旅人を歓迎してくれないホテルや患者を物のように扱う病院もずいぶん多いようです。
閑話休題。現代まで続く西洋の古いホテルはだいたい14世紀頃の開業ではないかと思われます。たとえばイタリアでベネチアのカバレットが1308年、ボローニャのアルベルゴ・アル・カッペッロ・ロッソが1375年です。イタリアにはこの年代のホテルが他にも幾つかあるようです。まさに当時のイタリアはヨーロッパの中心、最も華やかな文化が栄えていた所ですので、さぞ多くの人々が全欧から集まってきたのでしょう。なお、もっと古い所でドイツのドライケーニヘというホテルが1026年開業なのだそうですが、ちょっと場所を確認できませんでした。
日本で最初にできたホテルはおそらく横浜の「横浜ホテル」であろうと思われます。安政7年(1860)の2月24日開業したもので、建てたのはオランダ人のフフナーゲルという人です。このホテルは6年後に火事で焼失しました。次いで明治元年11月19日に東京築地に、かなり本格的な一流ホテル「築地ホテル館」ができています。建てたのは清水喜助という人です。相当豪華なホテルであったようですが、これも4年後に火事で焼失しました。