明治42年(1909)農商務省が宝石の重さの単位にカラット(1ct=200mg)を採用することを決定しました。宝石の日はこれを記念して日本ジュエリー協会が制定したものです。
宝石というのは大雑把にいえばきれいで高価な鉱物です。ただし「きれい」という基準は時代によって違うので、現在では高価でないものでも時代が違えば高価であったもの、将来高価になるものもあるかも知れません。
産出量が充分にあって、あまり高価でないものは「パワーストーン」と呼ばれますが、宝石とパワーストーンの差自体、ボーダーは曖昧です。ラピスラズリやトルマリンなどはかなり曖昧、ジルコンや水晶なども微妙です。
人によっては宝石とは「硬度8以上のきれいな鉱物に限る」といいます。その場合、宝石と言えるのはダイヤモンド(硬度10),コランダム(硬度9),クリソベリル(硬度8.5),トパズ(硬度8)のみになります(*1)。なぜ8以上かというと、空気中に大量に含まれる石英砂が硬度7であるため、7以下の石というのは空中にさらしておけば傷つき、輝きを次第に失っていきます。そのようなものは宝石とは認めないという立場です。
以下ではもう少し広い意味で各宝石について簡単に見てみましょう。
■ダイヤモンド(金剛石)硬度10で自然界の石の中で最も硬い。むろん硬いといっても丈夫という訳ではなく、意外と割れやすい。しかし表面を傷つけることは困難で、その輝きは長く保たれる。ダイヤを加工するにはダイヤの粉をちりばめた加工具を使わなければならない。宝石の中の王様であり、中には「ダイヤ以外は宝石とは認めない」という人までいる。基本的には透明度の高いものが高価であるが、きれいな色が付いたものは特別に高くなる場合もある。なおダイヤを財産として集める人もあるが、その場合は最低でも1カラット以上でなければ価値はない。
■コランダム(鋼玉)色が赤い物を『ルビー』と呼び、それ以外のものは『サファイア』と言う。ただし単にサファイアと言えば青系統の色の物であり、それ以外の色の物は例えばホワイト・サファイア、ピンク・サファイアなどのように呼ばれる。ルビーは大きな玉がなかなか出ないため、大きな物は非常に高価になる。またルビーにしろサファイアにしろ、スターを持つものはまた別の価値が出てくる。スターが出る石としては他にガーネットや水晶がある。水晶はサファイアと同じ六方晶系なので六条のスターが出るがガーネットは等方晶系なので四条のスターになる。
■クリソベリル(金緑色)硬度8.5。この中で宝石になるのは特殊な光学的特質を持つ次の二つである。(1)キャッツアイ(猫目石)猫の目状の光条が現れるもの。この猫目はサファイアのスターと同じで浮遊しているのが特徴。キャッツアイの安いイミテーションとして使用されたことのある虎目石の猫目は石の表面に固定されているので容易に区別できる。きれいな猫目の現れる、ある程度のサイズのキャッツアイは同じ程度の大きさのダイヤより高い。
(2)アレキサンドライト昼の太陽の下で見た色と、夜の人工的な光の下で見た色が変わるのが特徴である。キャッツアイ同様、これもきれいな変色をする、ある程度の大きさの石はダイヤより相当高い。なお合成スピネルや合成サファイアでも同様に変色するイミテーションが作れるが、天然アレキサンドライトより変色効果が強くハッキリ出るようである。
■トパズ(黄玉)硬度8。宝石店では「インペリアル・トパズ」「プレシャス・トパズ」などと呼ばれ、産出量が少ないため、かなり高価である。これに対して普通に「トパズ」の名前で店頭に並んでいるのは実は黄水晶(シトリン)である。
■水晶(クォーツ)石英(クリスタル)のきれいな結晶を水晶という。紫色の物はアメジスト、黄色の物はシトリン、黒い物はモリオン、と呼ばれる。ほかに褐色の物は煙水晶(スモーキークォーツ)、ピンクの物は薔薇水晶(ローズクォーツ)、などという。また細かい雲母の粒が入ってキラキラするものを砂金水晶(アベンチュリン)という。なおアメジストは大量に産出するため、発色のよくないものは熱処理して黄色くし、シトリン(あるいはトパズ)として販売されている。
■メノウ類大きくいえば水晶の変種であるが、混合物が多いので一般には別扱いされている。正確には縞模様を表す物をメノウ(瑪瑙,agate)、虹色を表す物をオパール(貴蛋白石)、単色のものを玉髄(chalcedony), 塊状の非結晶質のものを碧玉(Jasper)という。碧玉といっても緑とはかぎらず赤い物もある。
■ヒスイ(翡翠)類日本では大雑把に「ヒスイ」と分類されている物の中に実は硬玉と軟玉があり両者は鉱物的に全く異なるものである。硬玉(狭義のヒスイ)は輝石でできており硬度7、軟玉(単に玉とも)は角閃石でできており硬度6である。いづれも細工物として使用される。どちらも緑色のものが有名だが、白・ピンク・紫の物もある。硬玉の中で上質の物は琅{王干}(ろうかん)という。
■ベリル(緑柱石)硬度7.5。狭い意味での宝石に含めるのかどうかが微妙な石である。緑色のものを『エメラルド』、水色のものを『アクアマリン』、黄色いものを『ヘリオドール』、ピンクのものを『モルガナイト』、無色のものを『ゴーシェナイト』という。固定ファンを意外に多く持つ石である。
■トルマリン(電気石)結晶の半分が緑、半分がピンクで、その間に電圧が生じるため電気石の名がある。電気石自体はよく産出する鉱物であるが、この両端がきれいに色分かれするものが宝石として価値がある。(普通は黒い石が多い)ただし地域によってはピンクだけの石、緑色だけの原石も出る。また希に途中でグラデーションのように何種類もの色を出す原石もある。
■ラピスラズリ(瑠璃)宝石の部類に入れる人は少ないが、深みのある青い石は人気がある。表面に金粉のような粉が出る。実はアフガニスタン産が高級品として有名である。かなり大きなものが出るので、細工物として加工されたりもする。
■ジルコン(風信子鉱)硬度7.5。宝石に分類する人は少ないが、固定ファンを抱えた石である。褐色のものが多いが熱処理すると色々な色が現れるため、きれいな発色をしたものを指輪などに加工する。紫色のものは『ヒヤシンス』と呼ばれる。またホワイト・ジルコンはダイヤモンドのイミテーションとして使われる。ダイヤモンドのイミテーションとしてはキュービック・ジルコニアが有名であるが、これは合成ジルコンではなく成分的に異なり、ジルコニアだけではなくイットリウムを含んでいる。(天然のキュービック・ジルコニアも実は存在するが、かなりレアである。流通しているキュービック・ジルコニアはほとんど全て合成と思ってよい)
■真珠鉱物ではないが、便宜上宝石の部類に入れられることが多い。現在では養殖が多いが、その技術を確立したのが御木本幸吉である。なお普通の海水でアコヤ貝で育てた真珠の他に、淡水で三角貝により育てた安価な淡水真珠もある。なお同様に鉱物以外で宝石の部類に入れられるものとしては珊瑚や琥珀がある。
(*1)硬度8の石としてスピネル(尖晶石)もあるが、きれいな割に、あまり宝石扱いされないようである。それどころかサファイアやルビーのイミテーションとして使用されていたりする。