10月31日はガスの日です。これは1872年10月31日(新暦で。旧暦では9月29日)に横浜市の大江橋から馬車道・本町通りにかけて十数本のガス灯が灯ったことを記念するものです。アーク灯が灯った1878年より5年早いことになります。
現在日本の家庭・事業所は、水道・ガス・電気・電話という4つのネットワーク型インフラの上に成り立っています。この内、水道は各自治体の直営、電話はNTTの事実上の独占、電気は旧日本電力が分割された9電力会社(+沖縄電力)で運営されていますが、ガスについては非常に多数の企業体によって供給される競争方式になっています。
基本的にこのガス会社はガス管で供給する形式の都市ガスとボンベで供給する形式のプロパンガスに分類されます。(バリエーションとして団地などで集合型のボンベを設置し、そこから各家庭にガス管で供給する形式のプロパンガスもある。これは各住宅を見ると一見都市ガスのようだが都市ガスではない。アパート等を選ぶ時に注意が必要。)
この内都市ガスの場合は地域割されていて各地域では独占企業であるのに対して、プロパンガスの方はそのような規制によらず都市ガスの供給地域内外で激しい競争をしています。ただしどうしても足腰の弱い企業が多く、料金も都市ガスに比べて割高ですが、その分設備費を無料サービスするなどして対抗しています。このため、都市ガス供給地域でも安アパートなどでは家主側の負担の小さいプロパンガスになっていることがよくあります。
LPGはLiquid Propane Gas (液体プロパンガス)ではなく、Liquefied Petroleum Gas (液化石油ガス)です。石油の精製過程でできるガスで、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレンなどがあります。家庭用LPGはプロパン、タクシー用LPGはブタンが主成分です。ブタンはガスライターにも使用されています。
LNGはLiquefied Natural Gas (液化天然ガス)です。天然にガスのまま埋もれているものを掘り出したものですが、成分としてはメタンが主です。
プロパンはCH3CH2CH3, (プロピレン CH3CHCH2, ブタン C4H10)メタンは CH4 ですので、LPGは空気より重く、LNGは空気より軽いことになります。
ボンベ式のガス会社がプロパンを使用するのは、分子量が大きいため液体になりやすいからです。逆にLNGは液化・貯蔵などにより高い技術を必要とします。
しばしば熱量が話題になるのですが、プロパンガスはだいたい24000kcal/m3, LNGは11000kcal/m3 (実際にはガス会社によってかなり差があるもよう)で同じ体積当たりではプロパンガスが天然ガスの倍の熱量を出します。ただし、プロパンガスは天然ガスの3倍の重さがありますので、同じ重さ当たりでは天然ガスの方が熱量は大きくなります。つまりプロパンガス会社の言い分も都市ガス会社の言い分もどちらも正しいようです。
最近都市ガスのLNG化が進んでいます。その際、LNGは「クリーンなエネルギー」というのをさかんにうたってるのですが、「クリーン」というのは石油や石炭と比較したものであり、LPGとはそう大差はないようです。LPGはそれ自体が人体に有害という説もありますが異論もあるようです。
それではなぜわざわざガス会社に高価な設備投資の必要なLNG化を進めているのかというと供給の安定性の問題があります。
つまり、石油の埋蔵が中東地域に大きく偏っているのに対して、天然ガスは比較的遍在しています。また天然ガス自体の埋蔵量が石油と同程度あるのではないか、とも言われており、当面安定して供給が見込めることが一番大きな要因のようです。
天然ガスを利用しおうという動き自体は世界的なもののようですが、この分野では日本が最先鋒になっており、現在、世界の天然ガス生産のなんと7割を日本が消費しています。日本の天然ガス輸入先はインドネシア・マレーシア・オーストラリア・ブルネイなどで、この4ヶ国で輸入量の87%を占めています。天然ガスは日本国内でも産出しますが、地盤沈下の問題があって開発は難航しているようです。