9月3日は語呂合わせで「組合の日」。これは信用組合の日(しんくみの日)です。
組合というのは19世紀ヨーロッパでの労働者の生活用品を共同購入する活動から端を発しているもので、日本では幕末の思想家二宮金次郎(二宮尊徳)なども、庶民の相互扶助を促す「報徳思想」を提示しており、19世紀半ばから20世紀初頭に掛けて、様々な形での協同組合運動が行われてきました。
現在その流れは組織の目的や形態別に、生協・農協・漁協・信用金庫・信用組合などに別れています。その中で特に金融を目的とする協同組合を信用組合と呼び日本では1879年に二宮尊徳の弟子・岡田良一郎が1879年に設立した掛川の勧業資金積立組合を皮切りに、20世紀前半までに多くの信用組合が設立されたのですが、これらの信用組合は戦後の金融制度の改革で、一斉に「信用金庫」に転換しており、現在の「信用組合」の多くは戦後の自由な金融制度のもとで生まれた新しい金融機関です。
信用金庫(旧信用組合)と(新)信用組合は、しばしば「違いは何か」というのが話題になるので、少しまとめてみました。
■共通点(1)どちらも非営利の組合組織であり、利益はその地盤に還元する。 これは株式会社形式の銀行が明治時代に、田舎で豪農などから資金を集め て都会で投資に使ったため、田舎のインフラ整備が遅れ、出資者の利益が 確保されなかったことに対する反動として作られた制度です。
(2)個人や小規模の企業を会員とする。 そのため、会員(組合員)となっていた企業が成長すると、やがて会員では いられなくなる。これを「卒業生」という。
※出資者を信用金庫では会員、信用組合では組合員といいます。
■相違点(1)地盤の違い 信用金庫は比較的広域の地域を地盤とする。 信用組合には、地域信用組合、業域信用組合、職域信用組合がある。 地域信用組合は一般に信用金庫より狭い地域を地盤とする(*)。 業域信用組合は同業種の人が組織する。 職域信用組合は同じ職場の人が組織する。(会社内に本部が置かれる)
(*)中には巨大な地域を地盤とし、地方銀行並みの預金量を持つ信組もある。
(2)組合員以外の預金 信用金庫は会員以外でも自由に預金できる。 信用組合は組合員以外の預金に限度を設けている。
(3)卒業生に対する融資 信用金庫は可。 信用組合は不可。
なおマスコットキャラが信用金庫は「しんちゃん」、信用組合は「くみちゃん」です。なお「信用組合」の略称「信組」は「しんくみ」と重箱読みをします。
元々は銀行が大企業しか相手にしてくれなかったため、それを補う形で誕生してきた信用金庫・信用組合ですが、現在のように銀行が個人に対するサービスにも熱心になってきた時代には、若い人は貧乏であっても、信組等には入らず銀行に口座を設ける傾向があって、そのため運用状態の厳しい所も出てきており、近年は特に不況のあおりもあって信金・信組の合併が相次いでいます。また銀行が信用金庫・信用組合を吸収する例も多く出ています。
このためバブル崩壊以降、信用金庫の数は全国で3割減り、信用組合の数は半分以下にまで減少しています。
しかし中にはとても優良な経営内容の信金・信組もあり、そういう所の出資証券は配当率がとても高いので、隠れた人気投資商品となっています。ただし、出資者になるにはその地域に住んでいる、あるいはその職場に属しているなどの制限がありますし、市場で売買することもできないので流動性が悪くリスクも高い商品です。それを考えた上で投資すべきでしょう。