成層圏の日(6.08)

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1902年6月8日フランスの気象学者ド・ボール(Leon-Philippe Teisserenc de Bort,1855.11.05-1913.01.02)が成層圏の概念を発表しました。

ドボールはパリの生まれ。1892年から1896年に掛けて気象庁の長官を務めていましたが、退職後、ベルサイユ近くに自分の研究所を設立し、そこで風船に温度計を取り付けて飛ばし上空の気象状態を観測するという手法を確立しました。

この方法は当初は温度計が太陽の日射により上昇して正しい温度が測れなかったりして苦労しましたが、多数の実験と改良を重ねることにより正確な測定ができるようになったのですが、ここで彼は上空約11km付近に不連続面があることに気づきます。

その不連続面より下では気温は高度が上がるほど低下するのですが、そこより上では気温はほぼ一定で、更に上まで行くとわずかながら上昇しはじめることが観測により明らかになりました。

雲や雨などの気象現象はその大半がこの不連続面より下で起きています。そこで彼はこの不連続面より上では大気の成分自体が異なり、それより下で起きているような水分の循環(水蒸気の上昇→雲の形成→降雨)が起きずにただ重なりあっているだけなのではないかと考え、不連続面より上を成層圏(stratosphere,層を成している領域の意味), 下を対流圏(troposphere, 変化のある領域の意味)と名付けました。

今日ではこの両者の境界面を対流圏界面(tropopause)と呼んでいます。

ここで今日分かっている大気の状態を下から順に簡単に解説していきましょう。

 ■対流圏 troposphere (0〜12km程度)積雲(わたぐも)のような下層の雲は高さ1〜2kmです。高層雲のような中間層の雲が高さ2〜4km絹雲(すじぐも)のような上層の雲が高さ8km程度。ただし夏の積乱雲は下部は1km程度ですが上部は成層圏に到達します。ジェット旅客機は通常10kmくらいの高さ、対流圏の最上部を飛びます。■成層圏 stratopause (12〜45km程度)この領域では上に行くほど温度が高くなりますが、その熱源はオゾン層です。オゾンの濃度は成層圏の上部でかなり濃くなります。極地方に行くと、極成層圏雲という特殊な雲が見られますがこれが成層圏の高さにあります。その主成分は対流圏から運ばれた亜酸化窒素により作られた硝酸で、これが発達するとオゾンホールの原因になります。ICBMや旧ドイツ軍の長距離ミサイルV2などは成層圏を飛行します。F15イーグルなどの最高クラスの戦闘機も成層圏飛行が可能です。ボーイングなどでは成層圏を飛行して日米間を2時間程度で結ぶ旅客機の開発もしているはずです。

 ■中間圏 mesosphere (45〜85km程度)この領域では上に行くほど温度が下がります。上部には電離層の一番下のD層などもあります。この中間圏にも雲が現れることがあります。この高さの雲はあまりにも高いところにあるため、日が落ちてからかなりたっても太陽の光を受けることができて「夜光雲」となります。普通は極地方でしか観測されませんが大規模な火山爆発の後は、中緯度地方でも観測されることがあります。

 ■熱圏 thermosphere (85km以上)この領域では上に行くほど温度が上がります。100kmくらいまでを下部熱圏といい、その上を上部熱圏といいます。上部熱圏でオーロラ現象は起きます。電離層はE層が100km付近、F層は130〜1000km付近に広がっています。電離層が昼と夜とで状態が変わるのは、無線や海外ラジオなどが好きな人には周知のことでしょう。だいたい上空1000km程度までが、だいたい大気圏の範囲です。イリジウム衛星の高さは780km、国際宇宙ステーションになるとわずか400kmの高さを周回していますのでこれらの衛星は、宇宙空間にあるというよりは大気圏内を通行している超高度バルーンのようなものです。イリジウム衛星が太陽の光に当たって輝く「イリジウム・フレア」はUFOと誤認されるもののひとつです。


(2004-06-08)

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