こよみの読み方(47)八将神(3)



■歳殺神(さいさつしん)

歳殺神は金曜星の精で、最も毒害のある方位であるとされます。五行の土に属する、丑・未・辰・戌の4方位のみを巡行します。

年の十二支 子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥
歳殺の配置 未辰丑戌未辰丑戌未辰丑戌

歳刑神と同様、武器を格納することは吉ですが、それ以外については凶で特に婚礼などはよくないとされます。ただし大将軍よりは軽いので少しのことであれば構わないとのことです。

■黄幡神(おうばんしん)

黄幡神は羅候星(らごうせい,候は本当は目偏(睺)がつく)の精で太歳神の墓。また摩利支天の化身であるともいわれます。墓なので土に関連するものを犯すとよくないが、(摩利支天なので?)弓を射たり、陣幕を張るには良い方角であるとのことです。財産に関することも凶とされますが、これは黄幡と黄金が結びついたものかともいわれます。

歳殺神と同様、五行の土に属する、丑・未・辰・戌の4方位のみを巡行します。

年の十二支 子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥
黄幡の配置 辰丑戌未辰丑戌未辰丑戌未

■豹尾神(ひょうびしん)

豹尾神は計都星(けいとせい)の精で、黄幡神の反対側にいます。豹なので、この方角で家畜を求めてはいけないとされます。また不浄をきらう為、この方位に向かって立小便をするとバチがあたるそうです。

年の十二支 子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥
豹尾の配置 戌未辰丑戌未辰丑戌未辰丑

※黄幡・羅候・豹尾・計都といった名前が出てきましたが、このあたりには複雑な経緯があります。

まず基本的な話として、地球を中心に見た時、月が天空を横切っていく軌跡を白道といい、太陽が天空を横切っていく軌跡を黄道といいます。この名称は天空図で昔からこれを黄色い線・白い線で描いていたことによります。白道と黄道は天空上で2回交わりますが、これを天文学上、昇降点と呼んでいます。月の方が太陽より速く動きますので、月が黄道に対して、昇り降りするように見え、この昇る所を龍頭(ドラゴンヘッド,ノースノード)といい、降りる所を龍尾(ドラゴンテイル,サウスノード)と呼んでいます。

龍頭・龍尾の名称は、この付近は太陽と月が近くにあるため日食や月食の起きやすい区域であるため、天の大きな龍が太陽や月を飲み込むのだ、という説明が一般向けになされてきたことによります。黄幡という名称もありますが、これは黄色いハタ(旗)によって太陽や月が隠されるという意味で、やはり日食・月食に絡む名称です。

さて、天空上の特殊なポイントで、もうひとつ古代から重視されてきたものがあります。それが月の遠地点、つまり月が地球から最も離れる(つまり小さくなる)地点です。東洋では月孛とか月勃力と呼ばれ、西洋ではリリスと呼ばれます。皆既日食が起きた時に、リリスがどこにあるかによって、月の大きさが違うために皆既の継続時間が変わってきます。月勃力とはそこから付いた名前です。

さて、計都(インドのケートゥの音写)は最初はこのリリスのことだったのですが、後に混乱が生じて、ドラゴンテイルを指すようになってしまいました。豹尾の方はその名前からしても元々はドラゴンテイルだったと思うのですが、こちらが逆にリリスを指すようになったようです。豹尾神が計都星の精だという話は途中で両者が入れ替わってしまったことと関連しているかも知れません。

なお、黄幡は本来両方のドラゴンを指していたと思われますが、後には主としてドラゴンヘッドを指すようになります。また羅候(インドのラーフの音写)は元々計都に対する言葉として、ドラゴンヘッドを指していたようです。

インドの伝説では、神々が不死の妙薬アムリタを飲んでいた時、ひとりのアシュラ(阿修羅)がその中に紛れ込んで、1杯アムリタを飲んでしまったのだそうです。神々はすぐ気付き、そのアシュラを胴体で真っ二つに切ってしまったそうですが、不死なので死なず、その上半身がラーフ、下半身がケートゥとなって、共に天空を回るようになったとのことです。

なお、ドラゴンテイルを昔正交、ドラゴンヘッドを中交と呼ぶ呼び方もあったのですが、後世この二つの言葉は完全に逆転してしまい、正交がヘッドで、中交の方がテイルになってしまいました。

ということで、黄幡神というのはドラゴンヘッドの精であり、ヘッドですから「太歳神の墓」という所につながるのでしょう(世界的なシンボリズムとして、生は膣・死は口である)。そして豹尾神の方はドラゴンテイルの精ということになるようです。そうなれば歳殺神はひょっとすると、リリスなのかも知れません。最も凶悪であるということと、結婚によくないというあたり、いかにもリリスらしい気もします。

(羅候と計都については、羅候がテイルで計都がヘッドという説もある。また黄幡もテイルだとの説もある。とにかくこの付近は言葉が非常に混乱している)

(1999.09.02)
(2021.12.31 フォーム改訂)