こよみの読み方(42) 金神・大金神・姫金神

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さて、この金神ですが、いろいろな問題を含んでいます。恐らくこの金神に 関する話だけで一冊本が書けると思います。

そもそもこの金神は陰陽道の正統からは外れた存在で、出てきたのは平安後 期11世紀の後半、提唱者も陰陽道宗家ではなく、天武天皇の子孫とされる 文章博士の清原家から出たものです。いわば部外者からの提唱に対して賀茂 ・安倍両家が猛烈に反発し、この金神を忌避する必要があるかどうかに対し て何度も激しい議論が行われています。

金神の動きについても色々な説がありますが、1年間同じ方角にいて5年周 期の移動であるということだけは一致しています。簡単にまとめますと次の ようになります。

年\方角 子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥 甲・己 × × × × 乙・庚 × × △ △ 丙・辛 × × △ × △ △ 丁・壬 × × × × 戊・癸 △ △ × ×

ここで×はたいてい採用されているもの、△は文献により採用されているも のです。無印の所でも少数の文献に見られるものはありますがわずらわしく なるので省略しました。

さて、こういった年単位の動きに対して、大将軍と同様年内の遊行の話もや はり出てきています。これについてもまた色々な説があるようですが、藤原 公賢の「拾芥抄」(1320)によれば次のようになっています。

春 乙卯の日から6日間 卯の方角 夏 丙午の日から6日間 午の方角 秋 辛酉の日から6日間 酉の方角 冬 壬子の日から6日間 子の方角

これが江戸時代の「循環暦」になりますとこのようになっています。

甲寅から5日間 午の方角 丙寅から5日間 酉の方角 戊寅から5日間 中央 庚寅から5日間 子の方角 壬寅から5日間 卯の方角

「循環暦」はさきの季節による6日の遊行の部分も5日間になっています。
現代の運勢暦の中でおそらく最も流布している神宮館の運勢暦は次のような 遊行を採用しています。

立春から春の土用まで 甲寅から5日間 午の方角 立夏から夏の土用まで 丙寅から5日間 酉の方角 立秋から秋の土用まで 庚寅から5日間 子の方角 立冬から冬の土用まで 壬寅から5日間 卯の方角 土用の期間 戊寅から5日間 丑・辰・未・戌

神宮館方式では年単位の巡行は次のようになっています。

年\方角 子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥 甲・己 × × × × 乙・庚 × × 丙・辛 × × × × × × 丁・壬 × × × × 戊・癸 × × × ×

この金神は「金神七殺」といって、この方位を犯すと家族が7人殺されると 言われました。家族が7人いなかった時は隣の家の者まで殺されて人数合わ せされるそうです。

この「7」の数字の出所について「拾芥抄」は「金」は五行で西であり、西 には洛書で7が割り当てられているからであろうと指摘しています。

金神の凶意に対しては各種例外事項が言われます。例えば金神がいてもその 方角に九星の吉星である一白・六白・八白・九紫が来ていれば大丈夫と言わ れます。また天道・天徳・月徳などの吉神が巡ってきている場合も大丈夫と 言われます。しかしいくら吉星吉神がいても歳破・暗剣殺・五黄殺が来てい たらだめだとも言われます。まぁ、要するに金神については江戸時代頃は どうとでも言 えていたようです(^_^;

なお、この元々の金神に対して、のちに大金神・姫金神という似た遊行神も 出てくるようになりました。これらの新しい金神に対して元の金神は「巡金 神」とも言われます。

大金神・姫金神は対になって動く神で常に逆方向にいます。巡回は年単位です。

方位 子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥 子年 姫 大 丑年 姫 大 寅年 姫 大 卯年 大 姫 辰年 大 姫 巳年 大 姫 午年 大 姫 未年 大 姫 申年 大 姫 酉年 姫 大 戌年 姫 大 亥年 姫 大

こうして諸説が飛び交って江戸時代に人々から大いに恐れられた金神ですが、 その行く末に思いがけない幸運?が待ちかまえていました。幕末の川手文治 郎及び明治に入ってからの出口なおの二人は、この恐れられている金神こそ が実は封印された古代の神であり、それを恐れずに逆に敬えば人々に大きな 恩恵が与えられる、という思想を確立します。

川手が金光教、出口が大本教の教祖になったことはご存じの通りです。そし て大本教からは実に多数の新興宗教が生まれました。

これは以前にも書いたことですが、金神というのはこれも大将軍と同じく金 星の精で、金星は西洋では堕天使ルシファー及びメソポタミアの大女神イシ ュタル(シュメール名イナンナ)と関連があります。表面的に凶神であり、 又封印された古代の神というのは実に見事なイメージの連関を作っています。


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