こよみの読み方(38)方違への神々



さて、この辺りで「方違へ」(かたたがえ)について触れておきましょう。

またまた源氏物語を出してきますが、「帚木」の帖で光源氏は宮中から帰る方角を「なかかみ」が塞いでいるため、方違えをして中川辺の紀伊の守の家に滞在し、ここで空蝉と出会います。そしてそれ以来2度3度と方違えの度にこの家を訪ねるのですが、ある日源氏が空蝉に夜這いを掛けると、気配に驚いた空蝉が逃げてしまい、それに気づかず源氏が侵入してそこにいる女を抱こうとしたら、たまたま一緒に寝ていた軒端荻だった、というエピソードがありました。

人違いに気づいてもそこはさすがプレイボーイ。ちゃんと口説いた上で、出るときはちゃっかり空蝉が残して行ったと思われる服を持って帰ります。

この平安時代に盛んに行われた「方違え」は幾つかの遊行神がいる方角への移動を遠慮し、他の方角を経由して目的地へ行くというものです。

例えばその日仕事先から東の方にある自宅へ帰ろうとしたら東の方角に天一神が来ていたとします。

【A】          
仕事先 −−−−−−>自宅
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     誰かの家    
その場合まっすぐ帰ると神様のいる方角に向かって移動することになり恐れ多いので、それを遠慮していったん例えば南東にある知り合いの家に行き、そこで一晩明かしてから翌朝自宅に戻るということをします。すると移動は南東への移動と北東への移動になって東への移動を避けることができる訳です。(【A】)
【B】
自宅の中心−−>工事場所
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     \      
     誰かの家   
「方違え」によって避けなければならないと考えられたのは、このような「移動」ともうひとつ「造作」があります。天一神のように数日で移動してくれる神様はまだいいですが、1年間居座り続ける金神などが何か工事をしたい方角にいた場合困ってしまいます。その場合、その年の立春にいったん方違えになる方角に移動して一晩明かし、翌日そのまま自宅に戻るということを行いました。それで問題の方角で工事などをしても構わないようになる訳です。(【B】)

(実際にはもう少し複雑ですが、後で詳しく述べます。また後年もっとうまい方違えの方法が考案されますが、それもあとで述べます。)

この「方違え」で問題にされた神は天一、太白、大将軍、金神、王相の5神です。源氏物語の「帚木」で出てきた「なかかみ」とはこの天一のことです。
これを漢字で当てた場合「中神」であるという説と「長神」であるという説とがあります。

(1997/05/15)
(1999.07.29)
(2021.12.31 フォーム改訂)